俺だけ見てれば、いーんだよ。
「わかってないのは、そっち」
「十夜……?」
十夜の顔がゆっくりと近づいてくる。
え、え、え。
十夜の唇が、私の唇に触れる。
キス。
あまりのことに口をぱくぱくさせていると、十夜がにやりと笑う。
「キス、されたかったんだろ?」
「…っ、何言ってんのっ」
頬が熱い。
「私のファーストキスをーー!!」
「なら、余計嬉しい。那菜の『初めて』は独り占めしたい」
「もっと、ロマンチックに、とかあるでしょ。突然過ぎてわけわかんないしっ」
「まあ、落ち着け」
そう言う十夜の顔は今までに見たことのない、優しい笑顔で。
「那菜は、俺が好き?」
「……っ、好き……じゃ、ない」
「嘘。ちゃんと言え」
心臓が高鳴って、頬が熱くなって、私はどうすればいいかわからず、下を向く。
「好き……」
ようやく小さな声で言葉を絞り出す。
「聞こえない」
「……っ、十夜のイジワル!」
「好きだからイジワルしたくなるんだよ。いい加減わかれよ」
「なにその小学生みたいなの」
「譲らない、って言ったろ?俺は那菜の方から好きって言ってほしかったんだ」
なにそれ。
なにそれ。
十夜も私のこと、好きだったってこと?
「だって、いつも私のことバカにして、ブスとか言って…」
「だって、お前可愛いんだもん。ブスっていうとすぐ真っ赤になって怒るし」
「可愛い?」
「すげー可愛い」
もう、完全に、ノックアウトです……。