俺だけ見てれば、いーんだよ。
「十夜はどうして、私だけ呼び捨てにするの?泉のことはちゃんと、泉ちゃん、って呼ぶのに」
「そんなの決まってるだろ。『特別』だからだよ」
「他の男には、お前のこと呼び捨てでなんて呼ばせない」
「下僕だからかと思ってた」
「俺、どこまで悪いやつなんだよ」
だよね。
思わずふきだしてしまう。
いつもイジワルでバカにされていたけれど、よく考えてみたら、ここぞというときには、十夜は優しかった。
私のことをちゃんと見てくれてた。
今更気づくなんて、本当に鈍感だ。
「俺、1年の時から那菜のこと知ってた」
「えっ、ストーカー!?」
「じゃ、ねぇよ!」
私の頭を十夜がチョップする。
「那菜、放送部だろ?初めて那菜の声聞いたとき、いいなって」
「うんうん、それで?」
ニコニコして十夜の顔を見てたら、十夜の頬がちょっぴり赤くなった。
「やっぱいいいや、お前に話すのもったいない」
そう言ってそっぽを向いてしまった。
あれ?照れちゃった?
可愛いとこあるじゃん。
「教えてよー」
「やだね」
まあいいや、そのうち聞こう。
十夜は私を見ていてくれた。
ずっと待っていてくれた。
嘘ついて告白させるのはどうかと思うけどね!
しかも、なりゆきでの告白だったし。
まあ、こんなのが私と十夜らしいか。