俺だけ見てれば、いーんだよ。
「よっ、那菜」
「泉(いずみ)」
授業が終わると親友の泉がやってきた。
十夜の次にできた、大切な友達。
私と泉と十夜はいつもクラスでつるんでいる。
「また怒られてたじゃん、だっさ!」
「だっさ!って……ひどい!」
「あはは、ウソウソ。いい加減目つけられてるよね、あんたたち」
「十夜が悪いんだもん」
私は頬をふくらませる。
「俺は悪くねぇぞ?那菜が黙って貸せばいいんだよ」
「普通自分の持ってくるでしょ!?」
「そんな顔してると、眉間にしわができるぞ、ブス」
「ブス!?」
「あー、ほらほら」
また喧嘩になりそうな私たちを泉がなだめる。
「そんなことよりさ、ふたりともクリスマスどうするの?」
もうすぐ二学期も終わる。
クリスマスももうすぐだ。
「俺には忙しいイベントだな。5人くらいはさばけるかな」
「サイッテー!女の子の気持ち考えたら?」
私は声を荒げる。
「そりゃあ、みんなの気持ちに答えてあげたいけどな、だけど体はひとつしかないしな」
「那菜は?」
泉が私に聞いてくる。
「……私は、まだ、予定ないけど………」
十夜が私を指差して笑う。
「だと思った!あははははー!」
「うるさい!」
「十夜ー!」
廊下を隔てたガラスの向こうから、女の子が数人手を振りながら通った。
「おう」
十夜が悩殺スマイルを浮かべて、手を振り返す。
ファンクラブの人たちだ。
「十夜は、みんなでパーティーでもやって、王様みたいにふんぞり返ってれば?」
「えー、それ、つまんねー。」
わたしのクリスマスもつまんないですよ。
だってひとりぼっちだもん。
「ま、那菜もがんばって相手探すんだな。もう間に合わないかもしれないけどな!」
十夜が可笑しそうにクックッと笑っている。
……ムカツク!!