俺だけ見てれば、いーんだよ。
「ねえ、十夜」
「なんだよ」
「十夜のそばにはいつも女の子がいるのに、どうして誰とも付き合わないの?」
「そんなこともわかんねーのかよ」
十夜が真剣な目で私を見るから、何も言えなくなった。
十夜は時々、こんな目をする。
「俺が誰かのものになっちゃったら、みんなが悲しむだろー」
……はっ。
やっぱりサイテー。
泉、ふられるの確定じゃん……。
複雑。
十夜を取られるのは嫌。
だけど、泉のことも応援したい(出来ないでいるけど)。
十夜が誰とも付き合わないっていうのなら、告白なんてしないほうがいい。
この想いが行き場を失ってしまうくらいなら、片想いのままでいい。
『あたしは自分の気持ちを、十夜にちゃんと伝える』
さっきの泉の言葉がよみがえる。
『後悔する』のならどっちがいいだろう。
伝えて後悔するのか、
伝えずに後悔するのか。
私の心は天秤のように揺れている。
泉が告るなんて言うから。
告白なんて、考えたこともなかったのに。
「おい、どうした?顔がいつにもまして変だぞ、那菜」
「……っ、私はどうせブスですよっ」
「まあ、ブスには悪い虫がつかないからな、安心だな」
「?どういう意味よ」
「ほんとおまえって、鈍感だな」
?
なんかわかんないけど、馬鹿にされてるのは確かだね。
「十夜になんて、わたしの気持ちわかんないよ」
「なにかいいたいことあんのかよ?」
「……ないよ!」
「言わなきゃわかんねーだろ?言えよ」
私の目を、十夜の目がまっすぐにとらえる。
あんまりまっすぐすぎるから、私は、目を、逸らした。