好きっぽい★
「……ギ!」


誰かの声?


その声に顔を上げると、懐中電灯を片手に走ってくるカジ君の姿が見えた。


「カジくっ……」


震える唇から声を振り絞った。


「ナギ!」


大好きな声が耳元でしたかと思ったら、あたしの体はすっぽりとカジ君に抱きしめられていた。


「カジ君……」


「おせーから、何かあったのかと思った……。良かった。無事で」


カジ君は腕に力を込めて、ぎゅっとあたしを抱きしめる。


「心配かけんなよ」


「心配してくれたんですか?」


そう問いかけた瞬間、パッと体を離された。


「“みんな”心配してっから」


今、“みんな”って言葉を強調された気がする。

カジ君は「行くぞ」って言って、あたしの手を引いて歩き出した。

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