伝説の女~元No.1ホスト
私はホストが休みの間は色んなホストを巡り歩いた。

そして、たくさんのホストに出逢い、引き抜いてきた。

理由は様々。いわゆる訳ありといわれるホストたちをかき集めて作ったのが、ウチのホストクラブ、『湘南』だ。

崖っぷちと言われたやつもいる。

乱闘起こしてキラれたやつもいる。

けど…みんな凄くいいやつなんだ。

ウチのNo.1蒼介。

彼は…大好きな先輩を守るため、乱闘に参戦したために理不尽にクビにされた。

そんな蒼介を助けて居場所を与えたのは私だ。だからこそ私のことを慕ってくれている。

ウチの店長、龍。

彼は、蒼介が働いていた店の当時のNo.1。

蒼介を誰よりも可愛がり、大事にしすぎたゆえに、蒼介が襲われた。

それを今でも悔いている。その為に、蒼介のそばにいたいとウチに来た。

そして、オーナー補助をしてくれている飛鳥。

コイツは私の実の弟で高校を卒業したばかり。

両親は事故で死んだ。私と飛鳥は二人で生きてきた。

弟なんだけど…そんな感じはしないなぁ~。

常に敬語だし…?(笑)

そんなこんななメンバーだが、いつものように、始まった。

みんなはちゃめちゃでかなりの破天荒。クセも強くて、独特の個性を持つ強者たち。

そんなみんなが大好きで、私はたまに中を見回る。

普段はバックヤードで細かい作業をしているのだが、モニターで常に様子は確認している。

ふと、飛鳥が私を呼んだ。

「どした?」と言えば、モニター越しに蒼介の様子がおかしいと言われた。

私はすぐに表に出た。蒼介を見つけるとそこに座った。

「美華さま、いつもご利用ありがとうございます。ウチの蒼介の体調が気になりまして…よろしければ、私と飲んでいただけませんか?」と丁寧に言ってみた。

ほぼダメ元。けど…蒼介かなり良くないかも…。

頼む!!頷いてくれ…!

どうやら私の願いは通じた。そして、蒼介を下げた。

蒼介はバックヤードのソファーで横になった。飛鳥は色々とフォローしてくれている。

あっという間に時間は閉店時間。

「美華さま、本日は失礼ながらお付きあいありがとうございました。楽しんでいただけましたか?」と言えば、もちろんよと頷いてくれた。

ほっと私はひといきつくと、

「また来るわ。オーナーも指名できるようにしてほしいくらいだわ」と笑って去って行った、蒼介の一番客、美華。

「それは光栄です。ご指名いただければいつでも喜んでお相手させていただきます」

と笑えば、美華は笑ってくれた。

ウチのホストクラブの特徴として、仲間同士の絆が強く、自信と誇りを持って仕事をしているということ。

ってまあ、私がそう指導してるからなんだけどね。

客を見送り、みんなは後片付けをして帰っていった。

残されたのは、私と、龍と、飛鳥と蒼介。

「蒼介、俺がどれだけ心配したと思ってる!?体調くらいキチンと管理しろ!!体は資本だろう?」と怒る龍。

気持ちはわかる。蒼介は乱闘に出たとき、派手にヤられた。その恐怖から、たまに心と体に影響を及ぼすことを知ってる。

やつらはもちろん、私が潰してやった。けど…捕まってない。いつ、仕返しに来るかもわからない。

蒼介や、龍はその事に苦しめられている。

けど…私は彼らを守ることこそ指命だと思ってる。全力で守ってやる。

「うっ、スイマセン…」泣きそうな蒼介。

私は思わず、抱き締めた。

「蒼介…大丈夫だよ!心配すんな…」と優しく背中をポンポンしてやれば少し落ち着いてくれた。

「オーナー、あなたは蒼介に甘すぎます。もう少し厳しくても…」と龍が言う。

「龍、あなたの気持ちはわかるわよ!けど…蒼介も苦しみながらもがいてる。心に負った傷は中々癒えないものよ?もう少しいたわってやりなさい」と私が言えば、

「はい、オーナーがそういうのであれば…。俺、帰ります!!」と龍が言ったので私はそのまま見送った。

「さて、蒼介、私たちも帰りましょうか?今日はウチに泊まりなさい」と私は言ってなかば強引に、蒼介を車の後部座席に座らせた。

そして、その横に私は座った。

飛鳥は運転席に座り、ゆっくり車を走らせた。

「飛鳥、明日は朝から集会があるから…遅くなるかも知れないけど、よろしくね?」と私が言えば、

「承知しました。気張ってきて来てください」と返された。

うっ、相変わらずだな。と思いながらもわかったと言っておいた。

「でも、珍しいですね?定例会ではないときに呼び出されるなんて…何事でしょうね?」と飛鳥は言う。

そう、実は私もそれが気になっていた。

集会やら定例会というのは、いわゆる、ホスト業界のオーナーや、ホスト、店長などが集まり、意見を述べて交流するいわゆる交流会なのだが…

珍しく呼ばれた。

少し不安だが行くしかないことはわかってる。

「蒼介、大丈夫?」と声を掛ければはいと小さな返事が返ってきた。

「瑞希さん、これはプライベートなお話なのですが…先日、浩也様から言付けを預かりまして…お逢いしたいとのことです。お伝えするのが遅れましたが、お逢いできる日程をお伝え下さいとのことでした」と飛鳥は言った。

おい、ホントに何でそこまで姉の私に他人行儀な言葉遣いをする!?

毎回本気でそう思ってんのに…私は強く返せない。

「ありがとう、また連絡しとくよ」と私は言った。

そうこう話してるうちに家に着いた。

私は蒼介の肩に手を回して、ゆっくり中に運んだ。

飛鳥は私の後にはいり、鍵を閉めた。

「寝る?それとも話する?」と言えば、蒼介と飛鳥が声を揃えて話すると言った。

「温かいお茶でも入れとくよ。着替えておいで。飛鳥、寝巻き貸してやってね。入らなかったら私の貸すから」と私は言ってサッと着替えに上がって、降りてくると、手を洗って、お湯を沸かし始めた。

テーブルに灰皿をセットした。

そして、お湯が沸いたのでお茶を3人分入れて座った。

二人が降りてきた。

そして、お茶の置いてある前に座った。

私はタバコを取り出す。

飛鳥はすぐに反応し、ライターを出して、火をつけてくれた。

「ありがとう」と私は言った。飛鳥は特に何も返さない。

いつものことだから。
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