伝説の女~元No.1ホスト
「じゃあ、少し外出てきてもいい?」と私は言った。

「ああ、外の空気も吸わないとな。お前、ここ来てからホテルから出てないし…体鈍ってんだろ?」と徹は言った。

さすが徹。どうやら見抜かれている。

私たちは朝食を食べながら話をした。

といっても…今日はどんな講義にするとかの仕事のはなし。

朝食を終えて、私たちは講義の部屋に入った。

すでに人は集まっている。けど、私は周りを見渡した。

数名来てない気がした。

自分の意思で来たはずだからボイコットはしないと信じてる。

私は時計を見ながら舌打ちしている。

まぁ、揃った?と勝手な判断で講義を始めた。

内容は昨日とほぼ同じ。メンバーが違うだけ…。

私は出来るだけ、質問とかを多くして参加してもらうような形で講義を進めた。

講義はあっという間に終わった。

ふぅぅ、私は一つ息を吐いた。

「なるほどね。そーゆうことかって思ったよ。うん、キミらしい。お疲れ様…」そういってあの人は去っていった。

それを見送りながら私は立ち尽くしている。

残酷なことに頭が回らずフリーズしているのだ。

でも誰も、何も言ってくれなくて…。数分?私はそのままだった。

やっぱり声をかけてくれたのは徹だった。

徹の声で我に返る私。

「先部屋戻ってようか?このまま出てきてもいいよ」と気遣ってくれた。

こーゆう優しいときはホントに徹が補佐で良かったって思うんだよね。

けど、やっぱり親友でしかないな。

そう思う。私はきっとこれからも、徹には恋愛感情なんて湧かないんだろうな…改めてそう思う。

けど、今はまだ言ってあげない。傷ついて欲しくないし…仕事に影響してほしくないから。

でもいつか、ちゃんと言うね。

あなたには惚れないって。

さて、今日はなにしよう?私は回らない頭をフルに回転させ考える。

バカで単純な私に答えなんて出るわけないんだけど…。

よし、今日は誰と面談?しよう…そう思いながらノートをパラパラめくった。

ふと、私はあるページで手を止める。

趣味テニスと書いてある彼だ…。

学生時代は結構な実力者だったって言ってたっけ?

このホテル確かコートあったし…よし、決めた。今日はこの子と面談しよ。

テニスしながら…。

私は早速行動に移した。後先考えない私。

あとで後悔することも多い。それでも決めたら行動せずにはいられない。

私は彼の部屋に向かった。

しばらくして…部屋のドアをノックした。

彼はすぐに出てきてくれた。ウォーミングアップがてらににテニスをしてくれることになり、私たちはコートに向かった。

ラケットやシューズなどはレンタルで借りられたため、それでテニスを始めた。

会話しながらラリーするのはかなり大変だけど…。

腕前は確かなもののようだった。

「講師はスポーツ得意なんですね~」と言ってきた。

こんなときまで名前ではなく講師と呼んでくれる人は珍しい。

あっ、いや…武信は今も私のこと、オーナーって呼んでたな…。

そう思うとなんだか笑えてきた。

「どうかしましたか?」と言われて、何でもないよと返した。

私たちはしばらくテニスを楽しんで、ロビーに移動した。

ロビーの横に併設されてるカフェでコーヒーを飲みながら改めて話をすることにした。

お茶うけにケーキを選んだんだけど…彼の方が悩んでる。

もしかして…甘党!?

聞かずにいられない私は、「甘党なの?」と聞いてしまっていた。

嬉しそうにはいと笑う笑顔は爽やかでどこか可愛い。

何とかケーキも無事決まり話を始めた。

彼が甘党と言うことで、私はウチのあるスタッフの話をすることにした。

ウチでパティシェ修行をしながら厨房を担当してくれてる彼のこと…。

嬉しそうに聞いてくれた。

そんな選択肢もあるんだ…と驚いていた。

私は若い子の支援と育成に力を入れてると思わず独自の持論を熱弁してしまった。

けど、そんな話も興味深そうに楽しそうに笑いながら聞いてくれた。

この子と話すの、楽しいかも…。

私はつい興味本意で聞いてしまった。

「趣味は、テニスだけ?」って。

「いえ、経営には興味があります。若くしてここの講師を勤められるあなたからたくさん学びたいと思って希望したんです」と言ってきた。

なるほどね…。そっちか…。

「ホストとしてはどうなりたいの?」って私、ついついビジネススイッチ入ってしまってる。

なのに、そんなこと気にする様子のない彼は、真面目に考えて答えてくれた。

「僕は元々そんなに積極的な方ではなくて…」と自分のことを語ってくれた。

それでもここに来たら何か変われる気がしたって。

私はそんな彼を応援したいと思った。

「ウチ来る?」思わず言ってしまった。

「えっ?インターンですか!?」と言う彼は少し天然のようだ。

「インターンもだけど…ウチで私と一緒に働くか?って聞いてる…」

完全に私は引き抜きモードのスイッチを入れてしまった。

「嬉しいお言葉です…」とだけ彼は言った。

なので、一応、名刺だけ渡しといた。

「合格!!あなたはウチのインターン決定ね?そのあとでまたウチに来たいって思ってもらえるなら、連絡して」と私は声をかけた。

私の目に狂いはなかった。

完全に合ってる…インターン候補にあげた子はほとんど当たりだわ。

たぶんだけど…。
< 21 / 42 >

この作品をシェア

pagetop