伝説の女~元No.1ホスト
クラブになんとか着いた。

私はみんなに声をかけた。そして、研修合宿の講師に決まったことを発表した。

みんなは口々にさすがっす!!おめでとーございます!!とか言ってくれる。

けど…蒼介だけは違った。鋭い目付きに眉間のシワ…。切なそうな目…。

そんな蒼介から目が離せない。

何か言いたそうに口を開きかけるーその時、空気を読まない龍が、

「今は何も言うな…」と言った。

蒼介の気持ちを察してなのだろうか?龍は普通だ。

ほんとは知ってる。龍以上に蒼介が私に言いたいこと。

「もうひとつあるんだが…」と龍は言う。

「飛鳥にその資料は渡すわ。詳しくは飛鳥と店長に聞いてね。じゃあそろそろオープンね!!今日もよろしく」と私は言った。

みんなは表に出て行く。けど…蒼介は動こうとしなくて…

私は蒼介の腕を無理矢理引っ張って強引に表に出した。

「そんな顔しないの!!ほら、もうすぐお客様来るから…」と私は言う。

蒼介はビジネススマイルさえ出せないほどに動揺しているようだ。

そんな矢先、蒼介の一番客、美華は現れた。

もちろん指名は蒼介。

笑顔ない蒼介に心配そうな美華をよそに、席まで案内する蒼介。

私はそんな蒼介が心配で、「美華様、私が本日はヘルプにつかせていただきますので、よろしくお願いいたします」と私は言うと、美華を挟んで蒼介の反対側に座った。

私は美華に公には出来ないけど…と小声で研修合宿の話をした。

「それでなのね!!蒼介…」と美華は蒼介の気持ちを察してくれたようだ。

「じゃあ、今日は乾杯ね?あれ、入れて」と美華は言うと、私にこのクラブ最高金額のお酒を入れてくれた。

高いだけじゃない。味も確かな最高品。

「ありがとうございます」と私は頭を下げた。

「カンパーイ」と美華は言ってグラスのぶつかり合う音が響いた。

「蒼介…そんな落ち込まなくても…3週間じゃない!!」と私が言えば、

「3週間もオーナーに会えないなんて、寂しすぎる。おかしくなりそう…」と弱音な発言を聞いた美華は豪快に笑うと、

「何言ってんのよ!!No.1が…心配しなくても大丈夫よ!」と言うと、バシバシ蒼介の背中を叩いた。

「私だって寂しいわよ!こんな素敵なオーナーにせっかく出会えたのにしばらく会えないなんて…けど、蒼介、だからこそ、あなたはここで頑張るべきじゃないの?オーナーは名誉なことを任命されたのでしょう?」と美華は言ってくれた。

私は思わずうるっときた。

同じ名前の美嘉さんも同じようなことを言ってくれてたっけ…。

私をNo.1にしてくれた美嘉さんも…。

「ありがとうございます」と私は言った。

美華は笑ってくれた。
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