ほんとのキミを、おしえてよ。


目の前の家の表札を見れば、石彫りの五十嵐の文字。


「うええ!?ここだったの?早く言ってくれれば……

あ、私が帰るのを妨げてしまってたのか。ごめんなさいね。
はい、あなた様のお荷物です。どうぞどうぞお家をお入りくだ……


あ、そうだ!!」


入ってくださいと言おうとして私はあるものを思い出す。

ガサゴソと自分のビニール袋を漁って


「はい、あげる!」


人参を4本手渡す。


「え、いいの?これ、中村さんのじゃ……」


「いくらなんでも28本は多すぎって多分お母さんに言われるから、おすそ分け。
あーんど!あの人だかりから助けてもらったお礼!」


ニカッと笑って差し出す。というより押し付ける。


五十嵐くんは一瞬戸惑いを見せて、


「じゃ、ありがたくもらっとくな」

でもやっぱり最後はいつもの爽やか笑顔。

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