ほんとのキミを、おしえてよ。
なんて後悔しながら、やっとの事で五十嵐くん家に到着。
もはや気分は富士山登ったような疲労感だわ。
石彫りの表札を横目に人差し指に力を込める。
____ピンポーン
私の焦りも知らないで軽快な音なんて鳴らしちゃって!と無害なインターフォンを責めたところでどうにもならない。
『はい』
あ、良かった。五十嵐くんの声だ。
「五十嵐くん!あのね、鍵の忘れ物なかった?!あ、こんばんは中村です」
「え?中村さん、ちょっと待って。そっち行くから」
一旦五十嵐くんの声が途切れたかと思うとすぐに五十嵐くん本体が現れた。
「中村さん、どうした?」
さらにいつかのスーパーで見た超絶似合う赤いパーカーの部屋着。首にタオルをかけ、若干濡れている髪。
水も滴るいい男とはまさにこのこと。
で、なくて!
「あ、っ!五十嵐くん、モシカシテお風呂上がりでしょうか?」
風邪ひいちゃう!と思って五十嵐くんの答えも聞かずにドアを閉めた。