ほんとのキミを、おしえてよ。


「え?!中村さん、どう」


「湯冷めしちゃうし、ドア越しで話そう!」


この距離だったらきっと聞こえるよね。
湯冷めからの夏風邪は、治すの大変だもん。


「あの」


五十嵐くんがドアを開いて顔を覗かせる。


「この時間で大声出すと近所迷惑になっちゃうし、とりあえず入って」


あ、近所迷惑……!
確かにそれは気がつかなかった。


ああ、私がどう足掻こうが結局五十嵐くんに迷惑がかかる。

あ、今押しかけてる時点ですでに迷惑か。


「それで、どうした?」


扉に鍵をかけて、私を見る。


「あの、鍵の……忘れ物ありませんでしたか?」


「鍵?なかったと思うけど……一応、見に行こうか」


申し訳なさでうつむいて言葉を発すると、五十嵐くんは靴を脱いで部屋がある階段の方へと歩いて行く。



「すみません、お手数おかけいたします」


深々とお辞儀をして、私もその後に続く。


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