ほんとのキミを、おしえてよ。
「あ、でも私歯ブラシとか持ってない……」
制服着て着ちゃったから明日の服には困らないんだけどさ。
やっぱり虫歯になるの嫌だし。もっというと虫歯治療するのやだし。
「大丈夫だよー!歯ブラシなら予備のいっぱいあるし服だって何か貸すし。有紗ちゃん制服着てるし明日の服は心配ないよね?それからっ」
美羽ちゃんが背伸びして私の耳に口を近づける。
「下着類もちゃんと新品のやつあるから安心して?」
「う、うん。ありがとう」
さすが五十嵐くんの妹、私の言いたいことを速攻で読み取ってくれる。
すべてにおいてしっかりしていらっしゃる。
やっぱり兄妹だねー、すごいわ。
でもまあ、今日が日曜なの忘れて制服着てきちゃったんだけど、それがまさかこんな形で役に立つとはね。
人間なにがおこるかわかんないもんだね。
朝制服を着た私を褒め称えてやろう。
と、その前に。
「え、えっとじゃあ……本当に、いいの?」
最終確認をしようと五十嵐くんへと目を向ければ
「もちろん」
いつものように優しく笑っている。
ああ、やっぱり如来様だ!
如来様がここにいるよ!
拝んどこ、どの神様よりも絶対御利益ある。
今度、日を改めて菓子折り持って感謝の念を伝えに伺わなきゃだね。
よし。
足を揃えて背筋を伸ばし、
「一晩だけ、お世話になります」
独り言のようにつぶやいてそっと頭を下げた。