ほんとのキミを、おしえてよ。


「ああ、大丈夫だよ。俺たまにここで寝てるし。それよりも中村さんが……っ!」


私がゆっくりと顔を上げるとばっちりと瞳があってしまった。

コンマ0秒の速さでお互いに目をそらす。

昨日の今日じゃいくら寝たって、さすがに忘れられない。

きっとそれは五十嵐くんも同じで……


そうだ、だって私昨日のこと考えて気づいたら寝てたんだもん。

ため息混じりにぽわんと浮かぶ五十嵐くんの言葉。

あの、一晩忘れられなかった言葉がよみがえって必死に追い払う。


「で、でさ!二人ともなんで手握ってたわけ?」


話題を変えようと五十嵐くんの明るい口調が聞こえる。


「あの、この空き瓶が、その……」


瓶に目を向け、ぎこちなく歯切れが悪い私に五十嵐くんはすぐに勘付いた。


「美羽、お前なんか言ったな!」


美羽ちゃんに詰め寄る五十嵐くん。

あああ!どうしよう、珍しく五十嵐くんの口調が……

私の、せいなのか?

< 248 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop