ほんとのキミを、おしえてよ。


「俺、あのときの亜美の俺に向けた無邪気な笑顔が忘れらんないんだ。
亜美にとって俺は箸休め程度の存在だったってこと、わかってる。そんな女の言葉に引きずられる俺の方がバカだってことも、わかってる。

頭ではわかってんだけどさ、でもずっと、あれからずっと亜美の笑顔と言葉が頭の奥でまとわりついて離れないんだよ」



さっきから息をするのも苦しそうな五十嵐くんの表情は一向に和らがない。


そりゃそうだ、自分の一番辛い記憶話して楽しい人なんているわけない。

思い出したくないのに、消そうとしてるのに消えない記憶。

聞いてるだけで胸がえぐられる。



「それからずっと、怖いんだ。
好きとか、恋愛とかそういうの。
今までだって何度かは告白されたし結構良いなって思う子もいた。
でも好きになろうとすると自制がかかる。
また、俺には何もないって言われるんじゃないかって考えがどうしても過る。
あの言葉が呪いみたいに焼き付いて離れない」



言葉が、出ない。

苦しい苦しい、呼吸できないように口を抑えられてるみたい。

でもきっと五十嵐くんはもっと苦しい。ずっと長い間苦しんでる。

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