加賀宮先輩は振り向いてくれない
~プロローグ~




春の暖かな陽射しが歩き馴れない通学路に降り注ぎ、穏やかな風が頬を撫でる朝七時。

膝より上のスカートは中学校より数十センチは短くて、違和感と達成感が揺れる裾に合わせて心を満たす。

濃紺に白いラインのブレザーと青いチェックのスカート、赤いネクタイが特徴的なこの制服は県内第2位の進学校「桜美県立高等学校」の制服だ。

優秀な私は県内2位の高校に推薦入学の上に学力試験もトップで入学。入学式の新入生代表スピーチを校長直々にお願いされる希望の星。桜美期待の超新星だ。
身長164cmと平均身長より高めで勿論脚が長い、胸はEカップで体重は52kg。生まれながら茶色の髪は緩やかな曲線を描き腰まで伸びている。大きな目に高い鼻、口紅のcmのオファーが来そうな綺麗な唇とどこをとっても欠点のない顔立ち。
自分で言うのもなんだけど私は美人だ。
スカウトだって数十回は受けた。全部断ったけど。

そんな欠点一個につき長所が十個ありそうな完璧超人の私の名前は「結城 時雨(ユウキ シグレ)」。

モテてモテてモテまくりの中学生活を過ごしたけど彼氏はなし。初めての彼氏は私に見合う優秀でイケメンな人だと決めているから。

自宅からバスで四駅と歩いて10分の位置にある白い校舎とプランターや花壇の花々が印象的な学校が桜美高等学校、略して桜学(オウガク)。
優秀で美しい私がこの学校を選んだ決め手は家からの近さと制服の可愛さ。申し訳ないけど通学時間二時間と上下紺色のセーラー服はありえない。

バス停からきっかり10分歩けば目の前に校門と校舎。ここが私の青春の舞台。高鳴る胸と踊り出しそうな足を制して落ち着いて校門を抜ける。
一本道で校舎正面玄関、その道の中間に向かい合って体育館入り口とテニスコートがある。そして校舎正面玄関から左に向けばグラウンドまで続く道、右に向けば部室棟。

入学式は9時からなので随分と早くついてしまった。さて、探検でもしようかなと部室棟を向いたその時



花の香りを僅かに感じながら、私は彼等に出会う──────!






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