加賀宮先輩は振り向いてくれない


ぐいぐい引っ張られてたどり着いた先はさっき二人が出てきた部室だ。
部室にしては綺麗だし何だか微かに柑橘系の香りがする。用具もきれいに整頓されているし荷物も散乱していない。
少し感心していると中にいた女の子が入り口近くまで出てきた。

茶色の髪をボブにした、愛され系を体現する女の子だ。顔もまあまあ可愛いし、背丈も顔も小さくて目が大きいから人形みたい。
まぁ私のハリウッド級の美貌と並べば霞んでしまうだろうけど、評価に値する容姿だ。


「りょーくん、どうしたのその子~?」


ふわふわとした喋り方、あんまり頭は良くなさそう。


「新しいマネージャーの勧誘だ。てか、学校では名前で呼ぶなって言っただろ。」


「あ、忘れてた!ごめんねりょーくん。」


「あのなー・・・結城さん、こいつは雪下 聖菜(ユキシタ セイナ)。2年生で、帰宅部。雪下、この子は結城時雨さん。マネージャーに勧誘中だ。」


「結城時雨さんね!覚えたよ!」


にこにこと朗らかに笑う雪下先輩。とても先輩とは思えないがまぁ私が遅く生まれたのだから仕方無い。上品に見えるよう口角を上げて、目を細めて笑い一応挨拶する。


「よろしくお願いします。雪下先輩。」


なぜ帰宅部のこの先輩が早朝から部室にいるかは知らないし、加賀宮先輩を下の名前で親しそうに呼んでいる理由は知らないがまあカップルではなさそうだ。


「うっし、結城ちゃん!」


急に大きな声を出した楠先輩の方を向けばバスケットボールを手に立っている。


「俺達さ、去年までマネージャーがいたわけ。だーけーどー、加賀宮先輩にフラれて退部しちゃったんだな。いやー困った困った。でさ、自分で言うのもなんだけどうち、加賀宮先輩を筆頭にイケメン揃いなんだよ、どう?マネージャーにならない?」


キラキラ輝く満面の笑み、加賀宮先輩がイケメン過ぎて意識してなかったけど結構爽やかなイケメンだ。これは、入って損はない気がするぞ。どうする私!




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