加賀宮先輩は振り向いてくれない



二人に一礼してから部室を出て、体育館へ向かう。この学校には2つ体育館があるけど私が知っているのは入学式で使われる第一体育館だけだ。


適当に暇でも潰しながら時間を見計らって体育館へ行こう。
なんて思ってると後ろから名前を呼ぶ声。雪下先輩だ。


「結城ちゃん、入学式始まるまで暇かな?」


「暇ですよ。どうかしましたか?」


「結城ちゃんとお喋りしたいな~って思って。ダメかな?」


「構いませんよ。私も雪下先輩とお話ししたいです。」


ふわふわとした喋り方は思いの外、不快感もなく耳馴染みがよい。これがこの人の素なんだと思えば愛らしさも感じる。


「良かった!じゃあ体育館横のベンチいこ?そこだったら遅刻もしないしね。」


ひょこひょこ歩く先輩に並んで歩く。なんだか妹と歩いている気分だ。妹なんていないけど。


「結城ちゃんのこと、時雨ちゃんって呼んで良い?」


「良いですよ。私も下の名前で呼ばれる方が好きです。」


「えへへ、じゃあ私のことも聖菜って呼んで良いよ。あ、先輩はつけてほしいな。」


「はい、聖菜先輩。」


心底嬉しそうな笑顔の聖菜先輩を見てるとなんだかこっちまで嬉しくなる。
つられて笑顔になれば先輩はもっと嬉しそうな顔になるのだ。



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