不機嫌な恋なら、先生と
少しの沈黙があって、続けた。ちょっとかっこつけてしまった気がして、はにかんでしまう。
「なんてね……仕事ととしてとか偉そうに言ってみたけど、私、全然仕事できなくて、ヒカリさんにも怒られてばかりで、正直頼りにされてないし、好かれてないかと思うんだけど。
今の私にできることって、結局、今のこんな自分にプライドを持つことだけなのかなって思った。
だから、花愛ちゃんもプライドだけは持ってほしいよ。同じ女性として。
だって、やっぱり憧れるもん。
花愛ちゃんは、どうしたい?」
「私は……」と、逡巡すると、すぐに答えが浮かばなかったみたいで、「ちょっと考えさせてください」と、彼女は言った。
「うん。待ってるから。納得いく答え出して。私や雑誌のこと、考えなくていいから」
「先生、お待たせしてすみませんでした」
先生はどこにも行かないでその場で待ってくれていた。冷えたんじゃないのかなって、気になり、「寒くなかったですか?」と訊いた。首を振る。
「どうだった?どっか行っちゃったけど」と、彼女のいた方にそっと視線を向けた。どうやらもうその場にはいないらしい。振り返って確かめはしなかった。
「あっ、はい。あとは、彼女が決めることです」
「彼女が決めるって、説得しなかったの?」
「はい。私、彼女と会う前は、何が何でも話をつけて、帰ってきてやるって思っていたんですけど。それが彼女の為だって思ってたし。でも……なんか話をしてたら、それも違う気がしてきちゃって」
「なんで?」
「だって、お互いやりたくないことをやるってつまらないじゃないですか。卒業企画だって彼女が望んでないものを、みんなでやるってバカみたいです。
先生とお会いした日に、言われたこと思い出しました。
目的もあわない、信用できない人と仕事をするのは嫌でしょ。お互いって言葉。本当にそうですね」