不機嫌な恋なら、先生と
「すみませんでした」と、花愛ちゃんと私も並んで頭を下げた。どんなに怒られてもいいから、撮影をさせてもらえるまで、謝ろう。
そう思っていたのに、再び顔を上げた瞬間、KAMAさんの目の中には、星が輝いていた。
「あら、嫌だ。あたしったら、こんなことで怒っちゃって」
ほほほと口元に手を当て上品そうに微笑む。その視線の先にいたのは、先生だった。
もしかしてと思う。沙弥子さんが言ったイケメンを差し出せば機嫌が直るって言葉。KAMAさんの心にどストライクだったのだろうか。
「時間ないから、さっさとメイクするわよ。来なさい、小娘」とおそらく花愛ちゃんを呼んだ。
「……先生。もしかしてと思うんですけど」と、後ろに少し下がって小声で言った。
「ん?」
「狙われてますよ」
「そんな気がしたけど、まあ、撮影がそれでスムーズにできるならいいよ」と微笑む。たじろぐ様子もなく余裕と言った表情だ。
「あ、じゃあ私、今からメイクルームに行くんですけど、先生も行きます?」
「うーん。メイクはいいかな。撮影を見学させてもらってるから、いつも通りに動いていいよ。何か聞きたいことあれば、言うから」
「わかりました」