不機嫌な恋なら、先生と
控室のゴミをまとめていると、先生が後ろから声をかけた。
「お疲れ」
「お疲れ様です。すみません。ちゃんと見れました?私、普通に仕事してましたけど、先生、こっちに来ないので全然構わずで」
「大丈夫。ちゃんと見てたよ。せかせか飲み物配ったり、周りに配慮しながら動いてるとこ」
「それが私の仕事ですから。撮影で大事なことって、その場の雰囲気作りとかチームワークだったりしますから」
そういうと背をかがめ、私に目線をあわせた。軽く私の前髪をかき上げ、おでこがあらわになった。
「驚いたな」
「えっ?」
「雰囲気違う」
手を放すと前髪が落ちる。慌てて手ぐしで整えた。びっくりした。撮影に夢中になって忘れていたけど、KAMAさんにメイクをしてもらったんだった。途端に恥ずかしくなる。
「あの、なぜかKAMAさんにどブスと言われて、メイクを直されてですね。あの……その」と、自分でさえ見慣れない顔だから、どう見られているのか気になって俯く。
気分よくメイクルームを出たのに、先生の前だと、どうしてこんな気持ちになるんだろう。
「顔、上げて?」と先生に言われて、渋々また顔を上げた。目が合って、やっぱり恥ずかしくなる。