不機嫌な恋なら、先生と
言いたい気持ち
あっという間に夜になる。
編集部で、私が午前中に終わらせられなかったアンケート作りを再開する頃には、周りは早めの退社の空気。先生も取材を終えて帰ってしまったし。
そもそも休日出勤で、明日は休みだし、沙弥子さんも今日はデートだと言って、クリスマスだったことを思い出した。
予定はないけど、早めに終わらせて、ケーキか何か買って帰ろうかな。コンビニスイーツになってしまいそうだけど。
ひとり、パソコンに向かっていると、「お疲れ」と声をかけられた。
先生だった。
「あれ?帰ったんじゃないんですか?」
「今日、クリスマス」と、四角い箱を突き出した。
「もしかして、ケーキですか?」
「うん。差し入れ。みんな帰ったんだ?」
「そうです。みんなデートですよ。私みたいな独り身には……」と言いかけて口を押さえた。先生も笑うから、もう私の見得も何もあったものではないと、開き直ってもいい気がした。
「一緒に食べません?コーヒーでいいですか?」
「うん」
戻ってくると、私のデスクにケーキの箱が置いてあった。先生は隣の椅子に座っていたのに、そのまま私のデスクに近づいた。
「何が好きかわからなくてさ」と、先生はケーキの説明をしてくれる。
私がクスクス笑うと先生は変な顔をする。