不機嫌な恋なら、先生と

「どうした?」

「いいえ。先生、意外に可愛いなと思って」

選んだケーキの中に雪ダルマのレアチーズケーキがあったからだ。これを買ってる先生を想像すると可愛くて笑いたくなった。

「可愛いの好きそうだから」

「食べるのもったいないですけど、喜んでいただきます」と、それを選んで、申し訳ないけどフォークを刺して一口食べた。

「美味しい」

先生はプレーンのチーズケーキを選んで、ケーキフィルムを外している。

ああ。今日はクリスマスなんだと、改めて思った。

色々あったな。花愛ちゃんにドタキャンされたし、突発的なことして怒られたし、残業だし、でも先生とケーキ食べてるし。

変な一日だったけど、すごく充実していた。

「先生?」

「ん?」

「私、この前、先生にその日がクリスマスだったら、良かったって言いましたけど、今日クリスマスで良かったです」

「なんで?」

「先生、この前、言ってくれたじゃないですか。集中すればなんでも面白いって、あれって、本当だなって実感できたので」

「言ったけ、そんなこと」

「言いましたよ……先生は、気づいてたんですね。私が仕事に対して、意欲的じゃないってこと」

「さあ、どうだろうね」とそっけなく言う。
< 119 / 267 >

この作品をシェア

pagetop