不機嫌な恋なら、先生と

「でも、その先生と出会って、途中で夢が本当になったんです。
その先生が、私の誕生日プレゼントに本をくれたんです。
あのとき、学校に行くのが嫌で仕方なくて、そんな私の心に寄り添ってくれるような言葉と写真がいっぱい並んでて……読んだらいっぱい泣きました。
そのとき、思ったんです。私もこんな風に人の心を動かせるような本を作りたいって。
そして私みたいにそれを必要としている人に届けたいって。
できれば……小説が好きだから、文芸の部署で。
そういうステキな出会いを繋げたいと思ったんです。やっぱり人の心を動かせるのって人ですから。
だから、私の夢を本当にしてくれたのは、その先生なんです」

と、先生の方へ向き直った。

お礼を言おう。謝ろう。ちゃんと先生のこと覚えてるって、感謝してるって言おうと思った。今日なら言える気がした。

ツリーもイルミネーションも雪も降らない。それなのに、クリスマスの魔法でもかけられてるみたい。

違うか。KAMAさんのメイクの魔法のせいかもしれない。どブスでも少しくらいは、可愛く見せられるような気がした。素直になれれば。

だって、今日は思い返せば本当に最悪だった。

嫌いだと思っていた先生に、仕事もできなくて、いっぱい走ってボロボロで、雑用ばっかりして、クリスマスなのに一人で残業してる私を見られたから。

それなのに、終わってみたら最高の一日だった。

ありがとうが言いたいなんて、本当におかしい。自分でも笑いたくなってしまう。

だけど、ああ、もう本当にドキドキしてる。

もう言いたいことは言ったから、先生だって、私だと気づいてるのに。

改めて、『凛翔先生』と名前を呼ぼうとするだけで、こんなに緊張するんだ。

「それで……私、ずっと先生に言いたかったことがあったんです」

「言いたかったこと?」と、眉をひそめた。

「はい。あの……」
< 123 / 267 >

この作品をシェア

pagetop