不機嫌な恋なら、先生と

「良かった!まだいた!箱崎さん!」と、沙弥子さんの声が響いた。

「あ」と、二人でドアを見ると、すごい勢いで私の元に駆け寄り、抱き着かれた。

「もう聞いてよ!彼氏にデートドタキャンされたんだけど!なんなのマジで!もう、そんなの早く終わらせて飲み付き合ってよ!」

「えっ?ドタキャン?」と勢いに押されワンテンポ遅れて事態を飲み込む。

「そう!有り得ないよね?向こうも仕事だったんだけど、急に残業ってさ!クリスマスだよ!クリスマス!ていうか言うの遅すぎだし!」と、まくしたてるように言って先生に気づく。

「あれ?ていうか、先生まだいたんですか?先生もどうですか?予定ないなら、行きましょう!飲みましょう!」

私の予定なんてお構いなしに、先生まで誘うと、ソファに倒れこんだ。いじけているみたい。

彼氏を脂肪だなんて言ってたけど、なんだかんだ楽しみにしてたのかと思うと、可愛らしいところがあって沙弥子さんには悪いけど微笑ましい気持ちになる。

声を潜め「先生、予定あります?無理しなくても大丈夫ですよ?」と言った。

「そういう箱崎さんは?」行くの?と視線で訊かれる。

「これさえ終われば行けますけど。たぶん今日、飲んだら沙弥子さん面倒くさくなりますよ?」

頬杖をついて少し考えたような顔をする。意地悪そうな笑顔を向けた。
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