不機嫌な恋なら、先生と
「じゃあ箱崎さんが面倒くさくならなければ行ってもいいよ」
「もう。そんなに酒癖悪くないですから」
「どうだかね。この前はちょっと面倒くさかったからね。まさか真野さんと俺が……」
「あーっ!それは忘れて下さい!」
口を押さえたくなった。沙弥子さんがいるのにそんな恥ずかしい勘違い話をするなんて、やっぱり意地悪だ。
「すぐ終わる?」沙弥子さんが言う。
「あっ、はい、ただいま」と、ぎこちない返事をする。先生を横目で睨むと、目があってしまった。
「さっきの話、聞いて、悔しいなって思ったよ」
急に真顔になったかと思うと、そう言って立ち上がった。
「えっ?」
悔しいって、何が?と言いたかったけど、「真野さんも待ってる間どうですか?」と、沙弥子さんの方へケーキの箱を持って行ってしまったから何も言えなかった。
先生の話をしたのに、悔しいと思うことなんかあったかな。
言ってる意味がわからなくて、私の酔っ払った話のことかとも考えてみたけど、ピンとこなかった。
結局、その日は続きが言えなかったけど、三人で飲みに行って、途中から沙弥子さんの彼氏(ものすごく優しそう)も合流して、なんだかおかしい組み合わせだったけど、沢山笑った。
幸せに包まれているような、そんなクリスマスの夜だった。