不機嫌な恋なら、先生と

「お粥くらい食べれます?」

「うん。まさか作るの?」と、寝返りをうって体を向けた。

「はい。そのくらいだったら、作れますけど。あっ、でも嫌だったらいいですよ。色々買ってきましたから、えっと……ゼリーとバニラアイスとポカリと」と、その場に座り込み、買い物袋から取り出して床に並べていく。

それを見ると、少し笑いながら「そんなに食べれないから、一気に出さなくていいよ」と制した。

「あ、はい。そうですよね」

「じゃあお言葉に甘えてお粥をお願いします」

「……えっ?あっ、はい。わかりました。じゃあキッチン借りますね」

自分から作ると言ったのに、改めてお願いと言われたせいか、ギクシャクした返事をしてしまう。

キッチンで鍋、鍋と探していると、ふと気づく。ペアになってる茶碗やコップとか。料理しないと言いながら、意外に一通り揃っているキッチン用具とか、そういうもの。

彼女、本当にいないのかな。急に胸が騒いだ。

って、何、考えてるんだ。

今日は、純粋に心配だっただけなのだから、そういうの関係ないし。

いたら、きっとこんなタイミングで私を家に入れないだろう。彼女がきっと来てくれるに違いない。

というか、いたって別にいいことだし。

私と先生はただの編集者と小説家という関係なんだから。

だからって気になったのは、小説の進捗や締め切りがとか、そういうことじゃなかったけど。

先生の顔が見たかった。それは心配だったから。

あのクリスマスの夜が楽しすぎたせいだろう。少し身近な存在に感じれる程に。
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