不機嫌な恋なら、先生と
「だって……」
「大丈夫。書けるから。薬飲んだら、熱下がるだろうし。さすがに今日書かないと締め切り間に合わない」
「じゃあ、私ここで待ちます。何かあったら心配なので」
「そこまで重病人じゃないよ」
「だって、熱の原因もわからないんだし」
「まあ、好きにすれば」と、あっさり言った。
「はい、好きにします」
「本当に頑固だよね」
「先生にはよく言われます」
嫌みで返したのに、どこか楽しそうだった。
エアコンのスイッチを入れた。
先生は「美味しい」と、お粥に口をつける。食欲はあるみたいで、思ったより進みよく食べている。
「味覚あるんですか?」
「うん。風邪じゃないからかわかる。久しぶりにお粥なんて食べたな。なんか懐かしい」
「お母さん、思い出しました?」と、冷やかす。
「母親っていうか、風邪をひいたとき作ってくれたものを思い出したよ。煮込みうどんとか卵酒とか」
「あっ、うちも卵酒は風邪の定番でしたよ。なんだ。作れば良かったかな」
「昔は飲めたけど、今はどうかな」
「そういえば先生、お正月は実家には帰るつもりだったんですか?体調良ければ」
首を横に振った。
「締め切りあったし。実家に帰ると色々うるさいから」
先生の家族ってどういう人なんだろう。確か兄弟は弟がいて私と同い年だった。
「心配されてるんですね。自炊も出来ないから」
「出来ないじゃなくて、しないだけ」
珍しくムキに返すから、おかしかった。先生らしくない。