不機嫌な恋なら、先生と
「ご馳走様」と立ち上がり、キッチンへ向かう。
ワンテンポ遅れて追いかけた。
「あ、あと洗い物するので置いててください。書くなら少し休んでからがいいと思うし。薬だってすぐに効きませんよね」と、流しに立った先生に言う。
「悪い。ありがとう」
「いえ」先生の前に出て、裾をまくった。洗い物をしようとすると、先生は「ちょっと抱きしめてもいい?」と、言った。
「え?」
「このまま」
「えっ……と、それも観察ですか?」と、問いかける。さっきから心が火傷したみたいにヒリヒリしてる。普通を装えてるか自信がなかった。
「うん。小説を書き終わったら、もうこんなことも出来ないかと思って」
「えっ……」
先生は、有無を言わさないように、私を後ろから抱きしめた。
私は身長が低い訳じゃないのに、こうして包まれると小さく感じてしまう。
まるで自分が気の弱い小動物か話が出来るのを秘密にしてるぬいぐるみにでもなったみたいだ。身動きがとれなくて、呼吸をするのがやっとだったから。
私の髪に探し物をするみたいに軽く顔を埋めたかと思うと、頬を寄せるから、肌が粟立った。
「気持ちいい」
「……はっはい?」
「冷え性?」
私の温度が低かったのか先生は尋ねた。