不機嫌な恋なら、先生と
それに、と続けた。
「先生、私に言ったじゃないですか。
集中したら楽しいって。
それはきっと、夢中になったことがあるから言えることだし、それって言えるようでなかなか言えない言葉だと思います。
物語を考えることが、本当に好きだから、夢中になるものがあるから言えたんじゃないですか?
だから、夢中になるのも、他の誰かから見たら不謹慎なことをするのも、悩むのもすごく人間らしいと思います。
ていうか先生知らないんですか?
先生の描く人間性の描写、すごく評価されてるんですよ。
それって先生が、人間らしい感性があるから受け取る人がそう思えるんだと思います」
言い切ってから自分が熱弁していることに気が付いて、恥ずしくなって目を伏せた。相槌さえ打たずにただ先生も聞いているものだから、余計に。
「うん。箱崎さんのそういうところ、好きだよ」と、先生は静かに前置きするみたいに言った。
好きだよと言う言葉を反芻させ、そういうところかとイコールで繋げると、いちいち先生の言葉に反応する私に苦笑いしたくなる。
「だから箱崎さんを見てたら、本当に書きたい気持ちが湧いてきて、嬉しかったよ。この連載始めて、初めてだったから」
心がざわざわとしたけど、悟られないように唇を結んだ。