不機嫌な恋なら、先生と
結局、睡魔に負けた私はソファで眠っていた。目を覚ますと、毛布がかけられていて、寝ている間に先生がリビングに来た事に気づかされた。
時計は五時をさしていた。
先生も寝たかな。そう思って、もう一度、書斎に向かった。
「先生?」と扉を開けると鉢合わせをして、大きくのけ反る。
「おはよ」と先生は動じることなく微笑んだけど、どこか憔悴しているようにも見えた。
「おはようございます。って、もしかして、まだ起きてたんですか?」
少し寝てたみたいだと言うと、「ん」と手を突き出す。その手にあったのは、原稿だった。
「できたんですか?」
「うん。気づいたら意識、飛んでて。さっき起きた」
先生の身体がふらりと揺れた。倒れこむというより、私にゆっくり寄り掛かる。支えながらそのままゆっくり床に二人で座った。
「先生、熱」と体に触れてわかる。やっぱり調子がいいわけないのだ。
「うん。ロキソニンきれた」
「バカ」と思わず声にしてしまう。なんでそんなになるまで集中できるんだろうって。やっぱり、そういうところ、私から見ると有り得ない。
バカって。愉快そうに呟くと、「とりあえず少し寝る」と、言い切った。
「えっ? ここで、寝ないでくださいよ。寝室に行ってですね。まず……」
「うん。少しだけ、このままでいさせて」
先生は私の肩に頭を寄せる。そこが落ち着くのか、微動だにしなくなる。