不機嫌な恋なら、先生と
「はぁ」
「そうねえ。あたしの場合だとこの顔に髭っていうのが、おかしいかしらって思ったんだけど。
まあ、好きな男の子に相談したら、そのままでいいんじゃないかって言ってくれたから、気にしないことに決めたのよ。
でもあれね。
あたしはたまたまその好きな人が自分がそのままでもいいんじゃないかって心のどこかで思っていたことを言ってくれたから、すんなりそう決められたのよね。
今なら、そう思うわ。
自分がそうだって思ってる事程、受け入れやすい他人の言葉ないわよね。
自分の気持ち、代弁してくれてるものなんだから」
「代弁?」
「ええ。そうよ。だって、あたし、好きな人におかしいから剃れって言われても、きっと腑に落ちなかったはずよ。結局、そのままでいいと言われるまで、何べんでも聞いたに違いないわ」
そこで質問の話に戻り
「あれよね。自分を好きになろうとしなければいいのよ」と、さっぱりした顔で答えた。そして続ける。
「だって好きと思うと違和感を感じるんでしょ?そこに無理が生じてくるのよ。
そしたら、もっと自分がダメな奴に思えてくるわけ。
自分のこと好きと思えない自分が嫌だって。
だからね、ただ嫌いにならなければいいの。
あとは、人間なんて誰しも可愛いんだから、勿体ないことしない。あっ、可愛いって顔だけの話じゃないわよ。
その人の存在そのもののこと。いるだけで愛おしいものなのよ」
まあ、あたしは顔もだけどと、唇に指をあてウィンクする。隣で沙弥子さんが、気持ち悪そうにうぇっと吐く真似をした。