不機嫌な恋なら、先生と

凛翔先生


カフェの前に着くと、閉店作業をしているのが外からでも分かった。

先生の姿なんてなくて、現実を突き付けられた気持ちになる。急に連絡がつかなくなったから、帰ってもおかしくないし、もしかして待ってくれているかもなんて想像して、ここまでやってきた私に笑いたくなった。

KAMAさんが一気なんて言うから飲んでしまったけど、少し酔いが回ってるみたいだ。

こんなんじゃ、会ったとしても、たぶん先生にまた呆れられたに違いない。

「会わなくて良かったのかな」

自分を励ます様に呟いた。だけど、来た道を引き返しながら、先生のことを考えてしまう。

今日は何をしていたんだろう。

仕事で遅くなると言ったけど、ここでまた書いてたのかな。

どんなことを思いながら、この道を歩いて帰ったのかな。

また小説のことを考えてたりしたのかな。

先生の見えない足跡を探して、重ねて歩いてる気分になる。

会えなかった。その事実が寂しくさせるから、先生のことを思い出すことで、自分を満たす。

嬉しかったな。メール。気まぐれでも嬉しかったな。

心配されてるみたいで、女の子に見られたみたいで、嬉しかったな。

なんか、やっぱり会いたい。ずっと我慢してた感情が顔を出して、主張する。

無理だって、なだめても。会いたい、なんか会いたい。

「ぎゃっ」と、つまずくと、後ろからそっと腕を掴まれた。
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