不機嫌な恋なら、先生と
「うん。あの撮影のとき、すごいリラックスしてたから、いい写真いっぱい撮れたんだ。まさに私たちの雑誌のコンセプト通りって思った瞬間だったなぁ」
「雑誌のコンセプト通り?」
「あっ、うちの雑誌ね、なりたい自分になる、叶えるっていうのをコンセプトにしてるんだ」
「へえ。なんかかっこいいね」
「ふふ。あのモデルの子ね、花愛ちゃんっていうんだけど、花愛ちゃんって、ずっと痣がコンプレックスだったみたいなんだ。でも本当はおでこを出してみたい、痣を隠さない自分になりたいと思ってたんだって。
でね、その夢を撮影で叶えてる花愛ちゃんがね、すごくリラックスして、本当にいい顔してたの。
それで思ったんだけど、なりたい自分って色々理想を求めてしまうけど、本当は自然に生きることを言うんじゃないのかなって。
自然体の自分って、肩に力が入ってなくて、あんな風な顔をして生きてるんじゃないかなって。
人の生き方って本来そういうもののような気がして。
だから、そういう意味でメッセージを受け取ってくれる人がいたんだって知ったら、やったーって今思っちゃって……って、なんかごめんね、一人でべらべらと」
「ううん。なつめちゃん、仕事が本当に好きなんだね」と、遥汰くんは柔く笑う。