不機嫌な恋なら、先生と
「えっ? そう思う?」
「じゃなきゃ、そんなに喋らないよ」と笑われるから、少し恥ずかしくもなり、こそばゆくもある。でもそう受け取られて、悪い気はしなかった。
しみじみこの二ヶ月あまりのことを思い返すと、「まあ、それも先生の小説に助けてもらったお陰なんだろうな」と、こぼしていた。
「小説に助けてもらった?」
「あ、うん。って、なんかおかしいね」
「ううん。どういう意味なの?」
「実は私、文芸書を作りたくて出版社に就職したんだけど、配属されたのは、雑誌の部署でね。
先生の連載の担当に決まるまで、なんというかその場しのぎで仕事をしていたんだよね。
だから、こういう形でも小説に関わる仕事ができたのはすごく嬉しかったし、今できることを頑張ろうって思えるようになったかな。
まあ、まだまだなんだけどね。早く雑誌の編集者として、一人前になれるようにならないとな」
「……へえ」