不機嫌な恋なら、先生と
「あー、読んでない」
「そうなんだ」
「なんか、がっかりしてる?」
「うん。だって、読んで欲しかったから」
「そっか。なつめさんが担当してるんだもんね」
ううん。それだけじゃない。先生は、ご両親に認められないと思ってる。だから、弟の遙汰くんだけは、応援してくれてたらいいなと思ったんだ。だけど、それは口には出さなかった。
「うん。それもあるけど……遙汰くんは、先生の他の作品は読んだりするの?」
「実は読んだことないんだよね。俺は、元々小説とかは好きじゃないからさ」
「そっか。家族の人もそうなの?先生の作品、やっぱり読まないの?」
「うーん。読んでないんじゃないかな。あっ、別に仲が悪いってわけじゃないよ。
なんか、そういうのは別?親父が特に。子供にも自分みたいに会社員として、やっていってほしいみたいな考え方があるみたいでさ。だからか、兄貴が小説書いているの親戚とかにも話さないし」
「そっか」
先生が前私に言ってくれたことは、本当だったんだと思うしかなかった。だけど、仲が悪いわけじゃないという言葉で少し救われる思いはある。
「何かした?」
「ううん。別に。ただ、少し残念だなって思っただけ」