不機嫌な恋なら、先生と
「どうなんだろうな。
結構前の話だと、役者になりたいみたいな話をしててオーディションとか受けたりしてたけど。
最近は知らないな。
まだなりたいのか、就職しようと思ってるのかも、いちいち俺からは聞かないから」
「ふうん。役者か」
勝手に解釈する。やりたいことがあっても報われない。先生に対しての棘のあるような言葉は、そういう気持ちから出たものだったのかもしれない。
先生は自分の力で作家になるという夢を叶えたのだから、身近にそういう人がいるというのは、やる気の着火剤になるけど、感じ方によっては、消火剤になる可能性もある。
私だって、仕事でモチベーションがずっと上がらなかったとき、沙弥子さんやヒカリさんがとても眩しくて、出来ない自分が嫌になった。
「興味ある?あいつに?裸も見たからなー」
「ち……違います。裸って、会社だったらセクハラです。先生の弟さんだから、先生が心配してるなら、私も心配だなと思っただけだよ」と、先生が悪い冗談を言うから、否定した。