不機嫌な恋なら、先生と

先生は窓際の席に座ったままだった。

しばらくすると、彼女が椅子に鞄を置き、先生が顔を上げた。

二人は待ち合わせでもしていたみたいに、自然な会話を始めた。
 
そこで、私の携帯が鳴った。着信は、沙弥子さんからだった。

『お疲れ様です。箱崎です』

『あ、お疲れ。先生から原稿もらえた?もう戻る?なんか急遽ミーティングになってさ』

『あ、はい。分かりました。今、原稿受け取りましたので、すぐ戻ります』

何を話してるんだろう。先生、会社の人がここに来るのなら、どうして教えてくれなかったんだろう。色々な疑問が湧いてくるけど、戻るしかなかった。

会社に向かいながら、オルーの展示会での出来事を思い出していた。

まどかさんは、私が澤辺くんに匂坂先生との関係を聞かれたとき、以前、Grantがオルーの取材に来たといって、私をフォローしてくれた。

取材をしたという話は、まどかさんの勘違いだとあのとき思ったけど、よく考えると、あれは私を助けるというより、先生のためにフォローを入れてくれたようにも取れる。
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