不機嫌な恋なら、先生と

「どうだろ。でも、なつめちゃんの言うようにさ、兄貴がさやさんのことを小説に書いたっていうのが本当だったら、そういうことをしてもおかしくはないよね」

言って欲しくないことばかり言うから、聞かなければ良かったとさえ、思い始める。

遙汰くんは、今日、会ってくれてありがとうと、短く礼を言うと、そこで別れた。

私は携帯を手にして、先生に今から帰りますと短い文章で告げる。こんな携帯だけの会話じゃ、繋がっているのか、繋がっていないのか、よく分からない。

本音で話し合えた遙汰くんのほうが、もしかしたら、先生より、身近な存在じゃないかと思った。

だけど、そうしてるのは自分か。

携帯の前で悩んで、大丈夫だと言い聞かせて、不安になって。先生にもっと近づこう。

そこにはまだ、恐怖も潜んでいるけど、ちゃんと話そう。好きな人を自分から、遠ざけてはいけない。

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