不機嫌な恋なら、先生と
彼女は誰ですか?
土曜日になった。先生が家に遊びに来る約束をしていたので、いつもより丁寧に掃除をすませる。
食器棚の奥に眠らせていたティーカップセットを見つけ、社会人になってから始めたひとり暮らしだけど、全然人を家に入れていないことに気がついた。
引越したばかりの頃、澄美とピザをとって食べた。あの日以来か。
先生に会えるのは嬉しいのに、心の奥に潜む暗闇に気をとられそうになり、「かしこまりすぎかな」と払拭するように呟いて、ペアのマグカップを取りだした。
午後になって、先生は来た。玄関で迎え入れるとお土産にフルーツタルトを買ってきたと言うから受け取った。
私の家は1DKで、ダイニングキッチンを抜けるとテレビやベッドを置いてる部屋がある。
見渡すほどの広さはないけど、部屋に入ると先生は棚に目を止め、「懐かしい」とそこに飾られていたテディベアを見て目を細めた。
「これ、覚えてる。なんかなつめの部屋って感じするね」
「うん。実家から持ってきてるの結構あるからかも。なんか嫌だな。恥ずかしい」と、棚を隠したくて手を上下に振った。
「いいから、座って」と、二人掛けの青いソファーに誘導する。
「逆に落ち着くけど」と、腰を落とす。