不機嫌な恋なら、先生と

「あっ、あれは、だって仕事が終わったら、外に遙汰くんがいて、そんな風に待たれたら、断るのもどうかと思って。すごい寒そうだったし」

「そんな待ち方されたら、逆に何かあるとか思わないの?」

「ごめん。でも、先生の弟さんだし、冷たくできなかったんだ。でもすぐに帰ったし、先生に言ったし」

「言えばいいとかいう話じゃなくてさ。俺は、どこかで遙汰のこと信用できてない部分があるから、そういうことをされると不安にもなるんだよ」

先生は諭すように言うけど、もう兄貴の彼女のことをとらないと言った遙汰くんを思い出すと、違う、信用してほしいと言いたくなった。

だって、あの顔は、嘘を吐いてるようには思えない。

「遙汰くんは、もうそういうこと絶対しないし、私だって、先生の弟としか思ってないよ」

「なんでなつめが遙汰をかばうの?」

「だって、信用してもらえないのって、悲しいもん。

ていうか、昔の彼女を取られたからって、私のことまで信用できなくなるって、おかしくない?

私は、昔の彼女じゃないし。

本当に先生は私のこと、見てる?

先生だって、忘れられない人いるくせに私と付き合って、自分だけ言いたいこと言って責めて、ずるいよ」

捲し立てるように一気に言うと、「忘れられない人?」と、低い温度で先生は聞き返した。
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