不機嫌な恋なら、先生と

彼女は歯切れ悪くも

「だから、その……箱崎さんが、自分が異動したいから、彼に近づいて何かしようとしてるって、私が彼に伝えたことです」

と、言った。今度は私が驚いた。

「えっ?なんでその異動の話、知ってるんですか」

「展示会のときに箱崎さんたちが、その話をしていたのが聞こえてしまったんです。あれ?その話、知らないんですか?」

「知らなかったです」

失敗したというように、目を逸らす彼女は気まずそうだった。

「あの……気になるので今の話、詳しく聞いてもいいですか?」

伺うとまどかさんは、また気まずそうに答えた。

「はい。あの……展示会の日、箱崎さんが匂坂洋示の話をしているのを偶然、聞いてしまって。話の内容から、きっと掲載雑誌の担当の人なのかなと思いました。

だから、担当の人がそういう考え方をしているのを知って、ちょっと心配になって、それでお節介だとは思ったんですけど、彼に……」

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