不機嫌な恋なら、先生と

繋がる物語


地元に向かう電車の中で、タブレットを取り出した。表示させたワードの表紙には、タイトルも名前もなかった。






遙汰くんが連絡をくれた日、仕事が遅くなったにも関わらず、彼は近くのカフェで待っていてくれた。

「ごめんね。待たせて」

「ううん。こっちこそ、ごめんね。忙しいときに。でもどうしても見て欲しくて」と、椅子の上に置いていた鞄に手を入れ何か取りだした。

「この前、実家に帰ったんだ。そしたらさ、なつめちゃんが言ってた小説のことが気になって。兄貴の荷物とか、ちょっと調べたんだ。そしたらこんなの見つけちゃって」とUSBを見せた。

遙汰くんは、自分の持ってきたタブレットに入れて、ワードを表示させる。

そっと差し出す。私に読めと言うことだろう。

何が書いてあるんだろう。昔、先生が言っていた初めて書いた恋愛小説みたいなもの。そのとき、好きだった子、さやさんに書いた話。それがまどかとなんの関係があるんだろう。
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