不機嫌な恋なら、先生と
告白するなら、先生に
遙汰くんと会ってからすぐに私は先生にメールで話したいと連絡をした。実家に戻っているというので、翌日、私もそちらに向かうと伝えた。
待ち合わせしたのは、あの公園のベンチだった。
向かう途中、並木通りを歩くと、裸の銀杏は風で身を震わすように揺れていた。だけど、日差しは通り全体を照らし、足元をいつまでも黄金色の光が導いてくれるようだった。
自動販売機の前で足を止め、眺めていると、あの頃の自分が浮かんでくる。
ここで、先生の腕を掴んでみたいと思った。だけど、叶わなくて、先生を諦めて、私は逃げた。
あの頃の私が、大人になって、先生とまたこうして会えたなんて知ったら、どんな顔をするだろう。
信じない方がいいよと、大人の私に言うかもしれない。そう思うと笑えた。
「なつめ」
振り返ると、ダウンベストを着た大学生の先生が残像のように見えた。
報われなかった昔の気持ちが、追うように込み上げた。
すぐに逆光の中からネイビーのダッフルコートを着た先生が現れて、心はすぐに今に返る。
そんなことにとらわれている場合ではない。
今、一緒にいてほしい人を、しっかり繋げておかなきゃ。