不機嫌な恋なら、先生と
会話の途中で、ときどき先生が遠くを見るような表情をしたり、目を細めたりするから、気になって、視界に入れないようにした。
話し終わると、「なんか、ごめん」と先生は申し訳なさそうだった。謝ることは何一つないのだから、首を振った。
それより、すごく不思議だった。まどかさんから、あんな話を聞いて、先生はどうして私を嫌いにならなかったんだろう。腹黒いと自分でさえ、思っていたのに。
「でも、なんで私を疑わなかったの?まどかさんにああ言われて。私が、異動したいから、先生に近づいてきただけって思わなかったの?」
「まあ異動の話はさておき、顔出しさせるとか戦略考えたりするのは、普通だろ?作家は商品なわけなんだし。売らないと利益にならない。マーケティングの基本は利益の追求なわけだし」
先生のいうことは、納得ができた。
「あと、なつめが俺のこと、好きだって分かってるし。なつめは嘘で告白なんかしない。できないだろ?」
ああ。なんだ先生は、私のこと、こんなに信じてくれているんだ。私の気持ちがゆるぎないものだと、信じてくれているんだ。
「うん」
「まあ遙汰とのことも、何もないって分かってるけど、嫌なもんは嫌だった。そういうことはしっかり話しておきたかった。そしたら、話をすり替えるから、こうなった」と、横目でジロリと睨まれた。