不機嫌な恋なら、先生と
話をぶり返されると、何も言い返せなかった。
「正直、妬いたよ。なんで遥汰の肩を持つんだよって。余計に言いたくなるもんだよ」
「ごめんなさい。もう、ごめんなさいしか言えないけど、遥汰くんはそんなことしないって言ってたから、伝えたかったの」
へえと言う先生の態度はいまいちだった。その代わり、私に尋ねる。
「大丈夫?」
「え?」
「こんな小さい俺ですけど」
先生は、コートのポケットに手を突っ込み、正面を見たままぶっきらぼうに言った。私はその体と腕の隙間に手を入れ、腕を軽く掴んだ。
「大丈夫だよ」
そう言うと先生は、私を見て微笑む。
待ち合わせのベンチの前まで行くと「座る?」と、先生は訊いて、私は頷く。
ベンチに座ると目の前に広場がひろがる。子供がボールを追いかけたり、老夫婦が遠くのベンチで日向ぼっこをしている。
ここで先生から誕生日プレゼントをもらったことが、昨日のことのように感じられたのは、この景色があの日のままのようで、感じたかった気持ちを確かめるように今、味わっているからかもしれない。