不機嫌な恋なら、先生と

「ねえ、凛翔先生、私、先生からのプレゼント、本以外にも持ってるんだ」

「プレゼント?あれしか、あげた覚えないけど」

訝しげに眉をひそめる。先生にあの小説のことを耳打ちすると、驚いて私を見た。

「なんでそれ持ってるんだよ?」

「遙汰くんからいただきました」

「あいつ、本当にろくなことしない」と、項垂れた。

「ろくなことじゃないよ。こんなに嬉しいことなかった……これ、私の為に書いた話であってる?」

「あってるけど」

そっけなく答える。

「すごい感動したよ。ありがとう。でも先生、なんで私が友達のことで悩んでるって気づいたの?」

そのことを打ち明けたことは、誰にもなかったはずだから疑問だった。

「それは、なんか分かるよ。友達のこと話すなつめが、つまらなそうだったり、泣きながら下校してるとこ見かけたりしたら、なんとなく。強情だけど、分かりやすいから」

「強情って」

笑いあうと、先生はあーあと言いながら、開きなおったようにベンチに背中をもたれ、指先を軽く組んだ。
< 257 / 267 >

この作品をシェア

pagetop