不機嫌な恋なら、先生と
しばらくして先生がリビングに戻ってきた。
少し湿り気を帯びた髪と火照りを残した頬、着なれたようなスウェット。
隙だらけになった先生の姿に、目を伏せてしまいたくなった。
そうか、こうして段々と無防備な関係になっていくんだ。
「入ってくれば?」
「う、うん」
緊張を悟られないように、お風呂場へ向かった。
シャワーを浴びながら、シャンプーを手にした。お揃いの香りになるのも、なんだか照れくさかった。
スッピンは見せたくなくて、顔は後で洗おうと決めていたはずだったのに、緊張のせいか無意識のうちにメイクを落としてしまった。
「何やってるんだろう。最悪……」
シャワーをすませてからメイクをするべきか悩んだけど、待たせるのも悪い気がして着替えて出た。
リビングに戻ると先生は、ソファーに座ってスポーツニュースをみていた。私に気がつくと、なぜかふっと笑う。
「昔のなつめだ」
「え、そんなに幼い?」
「いや、昔から大人っぽい方だったから、そんなに変わらないんだろ。なんか飲む?」と、私に訊いて、水と答えた。
ソファーに二人で並んで座り、持ってきてくれたグラスに口をつけると、「今日、どうする?」と、先生は訊いた。
「えっ?」
「別々に寝る?」
今夜のことは、私に委ねるようだった。
まだ覚悟が決まっていなかったけど、一緒にはいたい。
「……それは、嫌だ」と、辛うじて答えた。
そういえば、先生は私が初めてで、大事にすると言ってくれた。そういう気遣いだと察した。