不機嫌な恋なら、先生と

「それとも、また男として意識してるの?ナンパされてるとでも思ってるわけ?彼氏に悪いとか考えたりしてるんだ。子供だね」

「い……意識してません。確かに、男性と頻繁に二人きりになると心配されると思いますけど」

「へえ。仕事でも?そんなことで、彼氏が嫌がるなら、この仕事できないんじゃない?続けたいなら、もっと理解のある彼氏を作ったほうがいいと思うけど。ていうか、仕事で男性と二人きりってないの?」

ないわけではない。女性編集者が多いけど、カメラマンとかイラストレーターとか男性と関わる機会だってある。過剰すぎる反応だってわかっている。

「仕事とプライベートは、わけたほうがいいよ」と真顔で言った。

「わ……わかってます」

「じゃあ、決定」

「いえ、決定出来ません」

「他に何か断る理由あるの?」

「理由は……」

先生とあまり関わりを持ちたくないからです。でかかって、やめた。

冷静になる。そんなの理由になるわけない。

先生は黙る私に、もういいやといった顔で言った。

「真野さんだったら、普通に協力してくれただろうね」

「……」

「実はさ、恋愛小説を書くのも女性誌で連載を持つっていうのも今回が初めてなんだよね。
真野さんからの依頼がなかったら、正直書く機会はなかったんじゃないかと思ってるよ。
真野さんもGrantで小説の連載は初めてだって言ってたから、この企画通すのも大変なとこもあったんじゃないかな。
そういう真野さんが、どんな気持ちでこの仕事を箱崎さんに任せたかってことも想像つかないなら、がっかりした。
まだ学生気分抜けないんだね。自分に甘いだけなんじゃない」

そう言って、蔑むように私を見つめた。



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