不機嫌な恋なら、先生と
「さっきの態度は申し訳ありませんでした。担当を続けさせてください。他になにか調べることがあればやりますし、プライベートで会っても構いません。なんでもやります。どうかよろしくお願いします」と頭を下げた。
そこで先生は、初めて私に優しい笑みを見せた。
答え合わせをして、正解と、わたしを誉めたときのような。
「よくできました」と、先生は言うと、私の頭をぽんぽんと撫でた。
それはほんの一瞬のことで、やめてくださいと言う隙を与えないくらい自然な動作だった。
遅れて頬を赤らめた私に気が付いていないのか、「よろしくお願いします」と、先生は原稿を手渡した。
さっき受け取ったときより重く感じたのは、必死の思いがあったからかな。もうシンデレラになっても、靴なんか置きっぱなしでいい。絶対先生には渡すものかと、胸に押し当てた。
「あとは真野と確認してから、ご連絡します。ありがとうございます。あのそれで、私、何をすればいいんですか?」
一瞬考えたような顔をすると、「詳細は、また連絡します」と、微笑む先生に、なぜかドキドキしてる。
それから少し恥ずかしくなった。
仕事とプライベート――しかも八年前の出来事を混合させている私は本当に学生気分どころか、中学生気分が抜けていないみたいだと。
夢をちゃんと叶えたのは私ではなく、先生なのに、おめでとうの一言も言えていない。