不機嫌な恋なら、先生と
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先生との約束
パソコンで匂坂羊示の名前を検索した。
次の打ち合わせまでに、弱みに繋がる何かを調べておきたかったからだ。
覆面作家の掲示板を覗いてみたけど、名前があがってるくらいで、本当に謎だと一瞬盛り上がって、話題は別の覆面作家に移ってしまってる。
匂坂先生のファンが小説について語るスレッドも似たようなものだった。
作品の科白を引用したコメントを書いていたり、『匂坂は秘密の恋をしている』と意味のわからないタイトルいじりがあったり、アンチなコメントと、そこに対する批判のコメントも混ざりあい、殺伐としている。
「ていうか、ネットに弱みが書いてあったら、もう顔出ししてるよね」
バカバカしくなって、やめた。
続けて先生のインタビュー記事を見つけたので、目を通してみた。今から五年前の日付になっているから、デビューして間もない頃かもしれない。
初めて小説を書いたのはいつ?と、訊かれて、『小学生のとき』と、『それから書かなくなった』と答えていて、私が知っている内容に、この人は本物の凛翔先生なんだと実感した。
また書くようになったのは、いつ?どうして?どんな小説?と、順を追って訊かれると、『大学生のとき』、『当時、好きだった子に向けて書きたくなって』、『恋愛小説ですかね。読む人によっては』と言っていた。